1. はじめに:JICA海外協力隊とは
JICA海外協力隊は、開発途上国の課題解決に貢献するため、日本国民が持つ知識や経験を活かして現地で活動する日本国政府が、JICAに委託して実施される国際ボランティアプログラムです。1965年に発足し、これまでに世界100以上の国と地域に6万人以上が派遣されてきました。2025年には、60周年を記念するほど、長い歴史があるため、派遣の形態の多様化、職種の種類の多様化など、プログラムそのものも大きく進化してきました。この記事では、連携派遣に焦点をあてたいと思います。
2. 連携派遣とは:団体・企業・大学との新たな協力の形
通常のJICA海外協力隊への個人参加に加え、近年注目されているのが「連携派遣」という制度です。これは、団体、企業や大学がJICAと連携し、自団体職員、自社の社員や学生を海外協力隊員として派遣する仕組みです。
つまり、JICAの海外協力隊連携派遣制度とは、民間企業、自治体、大学、NGOなどの各種団体、事業組織がJICAと連携し、社員や職員、学生をJICA海外協力隊として開発途上国に派遣する制度です。JICAと各組織が、提携調印を結ぶ必要があります。この制度を通じて、派遣団体は人材の国際的な経験を促進し、帰国後には、派遣された人は、その経験を組織内や地域社会に還元することが期待されています。
3. 連携派遣のメリット:団体・企業・大学・個人の成長
団体側のメリット
- グローバル人材育成: 派遣された職員は、開発途上国での活動を通じて、異文化理解やコミュニケーション能力、問題解決能力などを養い、グローバルな視野を持つ人材として成長し、その組織の活性化に貢献します。
- 団体イメージの向上: 現地での活動を通じて得られるネットワークは、派遣団体の国際的な活動や事業展開において貴重な資産となります。
- 新たな事業展開のチャンス: 派遣先での経験を通じて、新たな事業を展開したり、現在の事業をより発展させる可能性が広がります。
企業側のメリット
- グローバル人材育成: 社員を海外に派遣することで、異文化理解や語学力、問題解決能力を向上させ、グローバルビジネスで活躍できる人材を育成できます。
- 国際ネットワークの構築と海外ビジネスチャンスの拡大: 人的ネットワークが大きく広がり、海外ビジネスのチャンスが大きく広がります。
- 企業価値の向上: 開発途上国の課題解決に貢献することで、組織の社会的責任(CSR)を果たし、企業価値の向上にも寄与します。
大学側のメリット
- 学生の国際感覚育成: 学生を海外に派遣することで、国際的な視野を養い、国際協力への意識を高めることができます。
- 大学の国際化: 海外大学や研究機関との連携を深め、大学の国際化を推進することができます。
- 社会貢献: 学生の派遣を通じて、開発途上国の課題解決に貢献することができます。
個人のメリット
- 国際協力への貢献: 自分の知識や経験を活かして、開発途上国の発展に貢献することができます。
- 自己成長: 異文化体験や困難な状況を乗り越えることで、人間的に成長することができます。
- キャリアアップ: 帰国後、国際的なキャリアを目指す上で、貴重な経験となります。
- 帰国後進路:個人参加と比べた場合、帰国後の所属先の心配をする必要がない。
4. 連携派遣の種類:団体・企業連携と大学連携
連携派遣には、大きく分けて「自治体連携」、「企業連携」と「大学連携」の3種類があります。
しかし、実際には、2023年の連携事業の見直しが行われ、一元化が行われました。3つを統合する形で連携派遣制度を整理しました。
団体、企業連携
団体や企業が職員、社員を海外協力隊員として派遣する制度です。団体、企業は、職員、社員の派遣期間中の給与や福利厚生を保障し、帰国後のキャリアパスも支援します。
大学連携
大学が学生を海外協力隊員として派遣する制度です。大学は、学生の派遣期間中の学籍を保持し、単位認定や卒業後の進路も支援します。
5. 連携派遣実績:団体・企業・大学との連携事例
過去にに連携派遣を行っていた団体・企業・大学の具体的なリストは、JICAの公式ウェブサイトなどでは、あまり公開されていません。そこで、ここでは、連携事例として、いくつかの団体・企業・大学をご紹介します。
- 企業: A社(製造業)、B社(IT産業)、C社(金融業)など、様々な業種の企業が連携派遣を実施しています。具体例では、株式会社小川工務店、イオンタウン株式会社などなど多数。(日本商工会議所も連携事業を支援しています。)
- 団体:横浜市水道局、日本大学生物資源科学部、富山県、鳥取県などなど多数
- 大学: 東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、多くの大学が学生を連携派遣しています。(ほかにも、広島大学大学院、和歌山大学、清泉女子大学、酪農学園大学、愛媛大学など把握しきれくらい多いです。)
6. 連携派遣への参加方法:企業・大学・個人のステップ
企業・大学の場合
- JICAに連携派遣の相談・申請を行う。
- JICAと連携協定を締結する。
- 派遣する社員・学生を選考する。
- JICAの研修に参加する。
- 派遣国へ渡航する。
個人の場合
- 所属する企業・大学に連携派遣の制度があるか確認する。
- 制度がある場合は、応募条件や選考プロセスを確認する。
- 選考に合格後、JICAの研修に参加する。
- 派遣国へ渡航する。
このブログの訪問者は、個人に方が多いと思いますが、まずは、あなたの所属団体に、その制度があるか、制度の締結をしているか確認してください。なくてもすぐに、あきらめないでください。
あなた自身で、まずその制度を、所属先に詳しく説明し、自分が派遣されたら、所属先にどんなメリットがあるかを十分に説明して、あなたが派遣されるようにもっていけば、よいのです。あなたの情熱をそのような行動に移してください。あなたに、思わねチャンスがやってくるかもしれません。青年海外協力隊の活動では、行動力がとても大切です。派遣が決まる日本で、今すぐ、行動に移してください。
7. まとめ:連携派遣で広がる国際協力の可能性
JICA海外協力隊 連携派遣は、企業・大学・個人のそれぞれにとって、大きなメリットをもたらす制度です。企業はグローバル人材育成や企業イメージ向上、大学は学生の国際感覚育成や大学の国際化、そして個人は国際協力への貢献や自己成長の機会を得ることができます。
連携派遣を通じて、より多くの人々が国際協力に参加し、開発途上国の課題解決に貢献できることを期待します。
8. 参考情報:JICA海外協力隊 公式サイト
- JICA海外協力隊 公式サイト: 連携派遣のいくつかの事例
- https://www.jica.go.jp/volunteer/relevant/interview/
なお、この制度とは、似てはいますが、全く別な現職教員派遣制度も、あります。
その制度の詳細に関しては、長くなりますので、また別に機会に紹介させていただきます。
このブログ記事が、JICA海外協力隊 連携派遣について理解を深める一助となれば幸いです。
